1970年代に入ると、アメリカ映画は俄然活気を取り戻す。前半はニューシネマ勢が映画界を牽引。同時に「フレンチ・コネクション」のポパイ、「ダーティー・ハリー」のハリー・キャラハンといった型破りで新しいタイプの刑事が登場し、コッポラ、スピルバーグ、ルーカス、スコセッシなど若い世代の監督たちが、その才能を見せつけた。

1975年、ついにヴェトナムの悪夢から抜け出した大国は、「強いアメリカ」の再建に向かって進み始める。ニューシネマは次第にパワーを失っていき、観客は再び映画に夢や正義を求めるようになっていく。主人公が巨大な人食い鮫を爆破するラストシーンに歓喜し、無名のボクサーの “アメリカン・ドリーム”に喝采を送り、宇宙を舞台に繰り広げられる善と悪の戦争に熱狂した。

80年代に向かってアメリカ映画は再び大作志向に傾いていき、ニューシネマの時代は静かに幕を閉じた。

70年代のアメリカ映画(製作年) 70年代のアメリカ史
■1970年
「ウッドストック」(監:マイケル・ウオドリー)
「いちご白書」(監:スチュアート・ハグマン)
「ファイブ・イージー・ピーセス」(監:ボブ・ラフェルスン)
「ある愛の詩」(監:アーサー・ヒラー)
「大空港」(監:ジョージ・シートン)
「M★A★S★H」(監:ロバート・アルトマン)
「血まみれギャングママ」(監:ロジャー・コーマン)
「キャッチ22」(監:マイク・ニコルズ)
■1970年
アメリカ軍、カンボジア侵攻
ワシントンで大規模な反戦集会
カンボジアでクーデター、シアヌーク元首解任
婦人解放運動盛んに(ウィメンズ・リブ)
■1971年
「バニシング・ポイント」(監:リチャード・C・サラフィアン)
「黒いジャガー」(監:ゴードン・パークス)
「さすらいのカウボーイ」(監:ピーター・フォンダ)
「フレンチ・コネクション」(監:ウィリアム・フリードキン)
「ラスト・ショー」(監:ピーター・ボグダノビッチ)
「時計じかけのオレンジ」(監:スタンリー・キューブリック)
「ダーティー・ハリー」(監:ドン・シーゲル)
「断絶」(監:モンテ・ヘルマン)
■1971年
ヴェトナム戦争、ラオスにも拡大
ニクソン「新経済政策」発表(ニクソンショック)
アメリカ大統領補佐官キッシンジャー、周恩来と会見
■1972年
「ゴッドファーザー」(監:フランシス・F・コッポラ)
「ポセイドン・アドベンチャー」(監:ロナルド・ニーム)
「激突」(監:スティーヴン・スピルバーグ)
「明日に処刑を」(監:マーティン・スコセッシ)
「ゲッタウェイ」(監:サム・ペキンパー)
「ピンク・フラミンゴ」(監:ジョン・ウォーターズ)
「脱出」(監:ジョン・ブアマン)
「探偵・スルース」(監:ジョセフ・L・マンキウィッツ)
■1972年
ニクソン訪中。米中共同コミュニケ発表
戦略兵器制限条約(SALT-1)調印
ヴェトナム戦争で北爆激化
ウォーターゲート事件
大統領選挙でニクソン再選
■1973年
「スケアクロウ」(監:ジェリー・シャッツバーグ)
「グライド・イン・ブルー」(監:ジェームズ・W・ガルシオ)
「アメリカン・グラフィティ」(監:ジョージ・ルーカス)
「燃えよドラゴン」(監:ロバート・クラウズ)
「エクソシスト」(監:ウィリアム・フリードキン)
「スティング」(監:ジョージ・ロイ・ヒル)
「さらば冬のかもめ」(監:ハル・アシュビー)
「セルピコ」(監:シドニー・ルメット)
■1973年
北ヴェトナムとヴェトナム和平協定調印
第4次中東戦争勃発。第1次石油危機発生(オイルショック)
米ソ核戦争防止協定調印
■1974年
「チャイナタウン」(監:ロマン・ポランスキー)
「ゴッドファーザーPARTU」(監:フランシス・F・コッポラ)
「サブウェイ・パニック」(監:ジョゼフ・サージェント)
「スパイクス・ギャング」(監:リチャード・O・フライシャー)
「悪魔のいけにえ」(監:トビー・フーパー)
「タワーリング・インフェルノ」(監:ジョン・ギラーミン)
「ガルシアの首」(監:サム・ペキンパー)
「ビッグ・バッド・ママ」(監:スティーヴ・カーヴァーン)
「コックファイター」(監:モンテ・ヘルマン)
「狼よさらば」(監:マイケル・ウィナー)
■1974年
ウォーターゲート事件により、ニクソン辞任
フォード、大統領に就任
■1975年
「JAWS・ジョーズ」(監:スティーヴン・スピルバーグ)
「狼たちの午後」(監:シドニー・ルメット)
「カッコーの巣の上で」(監:ミロス・フォアマン)
「アドベンチャー・ファミリー」(監:スチュワート・ラフィル)
「キラー・エリート」(監:サム・ペキンパー)
「弾丸を噛め」(監:リチャード・ブルックス)
■1975年
フエ、ダナン陥落
カンボジア・プノンペン陥落
サイゴン陥落。ヴェトナム戦争終結
■1976年
「タクシー・ドライバー」(監:マーティン・スコセッシ)
「大統領の陰謀」(監:アラン・J・パクラ)
「イレイザーヘッド」(監:デヴィッド・リンチ)
「オーメン」(監:リチャード・ドナー)
「キャリー」(監:ブライアン・デ・パルマ)
「ロッキー」(監:ジョン・G・アビルドセン)
■1976年
南北統一、ヴェトナム社会主義共和国樹立
大統領選挙でジミー・カーター当選
アメリカの惑星探索機、火星に到達
アメリカ独立200周年
■1977年
「スター・ウォーズ」(監:ジョージ・ルーカス)
「未知との遭遇」(監:スティーヴン・スピルバーグ)
「サタデーナイト・フィーバー」(監:ジョン・バダム)
「オルカ」(監:マイケル・アンダーソン)
「ジョーイ」(監:ルー・アントニオ)
■1977年
カーター、国連での演説で「人権外交」を強調
パナマ運河条約及び関連条約調印
TVドラマ「ルーツ」放映。最高視聴率
エルヴィス・プレスリー、心臓麻痺で死亡
■1978年
「帰郷」(監:ハル・アシュビー)
「ラスト・ワルツ」(監:マーティン・スコセッシ)
「ミッドナイト・エクスプレス」(監:アラン・パーカー)
「ビッグ・ウエンズデー」(監:ジョン・ミリアス)
「ハロウィン」(監:ジョン・カーペンター)
■1978年
ヴェトナムがカンボジア侵攻、ポル・ポト支配が崩壊
核技術、ウラン輸出を規制する核不拡散法制定
■1979年
「エイリアン」(監:リドリー・スコット)
「地獄の黙示録」(監:フランシス・F・コッポラ)
「1941」(監:スティーヴン・スピルバーグ)
「ウォリアーズ」(監:ウォルター・ヒル)
「オール・ザット・ジャズ」(監:ボブ・フォッシー)
■1979年
中国との正式国交樹立
イランのテヘランでアメリカ大使館員人質事件発生
米ソ、第2次戦略兵器制限条約(SALT-2)調印

1970年

作品:「パットン大戦車軍団」
監督:フランクリン・J・シャフナー「パットン大戦車軍団」
主演男優賞:ジョージ・C・スコット「パットン大戦車軍団」※受賞拒否
主演女優賞:グレンダ・ジャクソン「恋する女たち」

1971年

作品:「フレンチ・コネクション」
監督:ウィリアム・フリードキン「フレンチ・コネクション」
主演男優賞:ジーン・ハックマン「フレンチ・コネクション」
主演女優賞:ジェーン・フォンダ「コールガール」

1972年

作品:「ゴッドファーザー」
監督:ボブ・フォッシー「キャバレー」
主演男優賞:マーロン・ブランド「ゴッドファーザー」※受賞拒否
主演女優賞:ライザ・ミネリ「キャバレー」

1973年

作品:「スティング」
監督:ジョージ・ロイ・ヒル「スティング」
主演男優賞:ジャック・レモン「Save the Tiger」
主演女優賞:グレンダ・ジャクソン「ウィークエンド・ラブ」

1974年

作品:「ゴッドファーザーPARTU」
監督:フランシス・F・コップラ「ゴッドファーザーPARTU」
主演男優賞:アート・カーニー「ハリーとトント」
主演女優賞:エレン・バースティン「アリスの恋」

1975年

作品:「カッコーの巣の上で」
監督:ミロス・フォアマン「カッコーの巣の上で」
主演男優賞:ジャック・ニコルソン「カッコーの巣の上で」
主演女優賞:ルイーズ・フレッシャー「カッコーの巣の上で」

1976年

作品:「ロッキー」
監督:ジョン・G・アビルドセン「ロッキー」
主演男優賞:ピーター・フィンチ「ネットワーク」
主演女優賞:フェイ・ダナウェイ「ネットワーク」

1977年

作品:「アニー・ホール」
監督:ウディ・アレン「アニー・ホール」
主演男優賞:リチャード・ドレイファス「グッバイガール」
主演女優賞:ダイアン・キートン「アニー・ホール」

1978年

作品:「ディア・ハンター」
監督:マイケル・チミノ「ディア・ハンター」
主演男優賞:ジョン・ボイト「帰郷」
主演女優賞:ジェーン・フォンダ「帰郷」

1979年

作品:「クレイマー、クレイマー」
監督:ロバート・ベントン「クレイマー、クレイマー」
主演男優賞:ダスティン・ホフマン「クレイマー、クレイマー」
主演女優賞:サリー・フィールド「ノーマ・レイ」